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音響計測技術の研究

 
 

背 景
 
 広く一般に利用されている音響機器(スピーカ、イヤホン、マイクなど)の特性(周波数振幅特性、位相特性、歪特性、など) を測定・把握することは、出荷時の品質保証などにおいて必要です。また、これらの機器は。部屋の音響特性の測定や、様々な音響実験において、測定機器として利用がされるので、その周波数特性や指向特性の把握を行っておくことは大変重要です。
 そのような背景において、イヤホンなどの民生機器は月産数百万個という大量に生産されているので、その測定も、早く、安価な装置で、ということが強く望まれています。また、研究・実験用途の機器に対しては、より精度の高い測定が望まれています。このような背景より、本研究では、音響計測を「早く」「安く」「精度良く」行うためのハードウェア評価ならびに計測処理方式の研究を中心として行っています。

基本技術
 
 音響特性を求めるために、次のような技術を利用します。

インパルス応答
 音響機器の周波数特性や部屋の残響特性は、インパルス応答を用いて求められます(図2)。 このインパルス応答を測定する際には周囲雑音などによる精度の低下を防ぐ必要があります。

TSP信号
 TSP(Time Stretched Pulse)信号は、インパルス応答測定に使われる信号で、インパルス信号を直接流す方法よりも高い信号対雑音比のインパルス応答が得られます。


研究内容
 
現在行っている研究は以下のとおりです。
  • インパルス応答測定方法の研究
    周囲雑音に強い測定方法や、効率的・高精度に周波数特性・非線形歪を測定する方法などを研究してます。この研究は企業との共同研究です。
     
  • USBオーディオインターフェースの特性の研究
    USB接続のオーディオインターフェースは、測定用のAD/DA変換器が高価なため、それに代わる安価な機器として最近注目されています。この研究では、USBオーディオインターフェースの特性評価方法の確立と評価を行います。
     
  • 音響機器の特性計測の研究
    スピーカやヘッドホンの周波数特性や歪特性についての研究です。 特に、スピーカを長時間駆動させたときの特性の変化や、歪特性の再現性について調べています。
     
  • 音の可視化の研究
    目に見えない音を多数のマイクロホンで測定して可視化することで、音のさまざまな現象の理解を進めます。現在は、バスレフ型スピーカの動作の可視化を行っています。
     

   この研究は、日本音響学会の 2009年論文賞
     受賞しました。


図1.スピーカ

 
図2.インパルス応答と周波数特性・残響特性


図3. 開発した測定用 GUI

 
 
図4.バスレフ型スピーカから出る
音の可視化 (動画)
振動板(上の三角形)とバスレフポート
(下の管)から出る音が正負(赤青)逆
になっており、正面で音が小さくなって
いる様子を測定。